さそりがため– category –

「ねえ、大丈夫？」行き倒れていた僕に、彼女が手を差し伸べてきた。その手はふわふわと柔らかく、まるでマシュマロのようで――春日部花音「私たちのお店にようこそ！」やってきたのは洋菓子店【marshmallow tree】（マシュマロツリー）彼女はそこの新米オーナーで、僕を住み込みで雇ってくれるという。朝霞汐「一緒にお店を盛り上げていこうね」こうして始まった洋菓子店員としての新生活。お世辞にも流行ってい…

「私ではご不満ですか、旦那様？」目の前の彼女は、顔色ひとつ変えずに告げた。突然舞い込んだ結婚話。相手はどこから見ても正真正銘のお嬢様。髪の毛はさらさらで、出るところは出ている悩ましボディ。そしてなによりも、抜群にかわいい。実家の旅館に融資してくれた上に、お嫁さんまで貰えちゃうなんて……まさに冗談みたいな本当の話。でも、今すぐ結婚は困る。彼女はとても魅力的だけど、お互いまだ学生なわけだし。何よりも、…

「ねえ、どっちを選ぶ？」春、それは出会いの季節。桜並木の中、俺は新しい学園への転入生活に胸をときめかせていた。そう、校門をくぐるほんの数分前までは――「伝統を重んじる月華会で決まりだよね！」「革新を求める天道会の方が楽しいわよ♪」俺の転入する間ノ島(あいのしま）学園には2つの生徒会が存在し、互いが常に競い合っていた。両生徒会共に支持率は五分と五分のイーブン。その均衡を崩すのが、俺が持っている最後の…

「私たちの学園へ、ようこそ！」夏休みが終わり、文化祭や体育祭といった秋のイベントを迎える新学期。姉の薦めのまま転入を決めた俺は、新たな生活への期待に胸を躍らせていた。そう、校門をくぐるほんの数分前までは――俺の転入する間ノ島学園には2つの生徒会が存在し、互いが常に競い合っていた。月華会月華会は学園設立時から存在する由緒ある生徒会。月華会を支持する生徒達はノーブル感溢れる深緑色のロングスカートの制服…

本編の主人公、騎士見習いの「海神 慶」はこの日、 立派な聖騎士になるために地元の小国「アドゥルヘイム」の 田舎町から旅立とうとしていました。 ……と言えば聞こえはいいのですが、「（……悔しくない。け、決して失恋が原因で街を出ていくわけじゃないぞ）」本当の理由は、どうやらそっちのようでした。 慶は一度だけ未練たらしく街の方へと振り向き、 街と外の世界を隔てている門をくぐりました。――と。「なんだあり…